妊娠期間中お腹が大きくなるにつれ肩がこる腰が痛い、足がむくむという症状が出てきそう、このように想像する方は多いと思います。しかし、妊娠期間中お尻が痛くなりやすいということを予測している方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。実は妊娠期間中特徴的に痛みが出る場所、それがお尻、仙腸関節なのです。「先生、お尻が痛いです」という妊婦さんは本当に多いのです。これは特に妊娠中期から後期にかけ発生しやすい痛みのパターンで、お尻周りの関節の痛みや筋肉の痛みが何もなく出産産後へ向かう妊婦さんのほうが少ないのではないかと経験から感じます。このお尻、仙腸関節の痛みが出やすいことには理由があります。どうして妊婦さんはお尻、仙腸関節に痛みが出やすいかを開始、それが起きないようにするために対策をとっていくことはとても重要です。
28週以降特に起きやすいお尻の痛みの原因は歩き方の変化
体重の増加と姿勢の変化に伴う妊娠中期に起きやすい腰痛と同時進行し、妊娠中期から後期に起きやすい痛みのパターンがあります。このパターンの特徴はお尻の筋肉が痛くなるということです。おしりが痛いという妊婦さんは本当に多く私のところに来ます。このお尻の痛みとは、仙腸関節、仙骨と腸骨にまたがる筋肉が硬くなり痛みを生じるのですが、これが妊婦さんに本当に多く見られる特徴的な症状で、これには全ての妊婦さんが気をつけていなければいけません。というのは、妊娠後期30週も過ぎてからこの痛みが人によっては非常に強く、歩くたびに痛いとか手を壁につかないと力を入れるたびに痛いなどといった、非常にやっかいな痛みとして出るからです。
このお尻の痛みの原因として考えられるのは、妊婦さんはお腹が大きく前に出てくることにより歩き方が変化します。歩幅は狭くなり、がに股気味になり、ペンギン歩きのようにすり足をするような歩き方にだんだんとなってきます。これは足を今まで上げることができた歩き方と異なり、お腹が重く前に出ることで自然と足をあまり上げない歩き方になっていくからです。
このようにすり足気味の足をあまり上げない歩き方になるとどこの筋肉が疲れるのか、それがお尻の筋肉です。今まで足をある程度上げ歩いていた歩き方の時は、お尻の筋肉をしっかりと支えていたため血液の循環も良く筋肉に柔軟性があります。筋肉は動かしていないと硬くなってしまうため、妊婦さんは筋力が落ちるだけでなくこの柔軟性が減少するのです。このように妊娠後期に進み歩き方の変化から、お尻の筋肉が硬くなると、ちょっと力を入れた拍子に筋肉が損傷し、痛みが生じるというケースが非常に多くあります。これは慢性的な腰の上の方の腰痛とは異なり、動かすたびに痛いとか、寝返りをうつたびに痛いとか、歩くたびに痛いといった動作時に起きやすいタイプです。
また朝起き上がる時や、長時間ソファーに座っていていざ立ち上がろうとする時など、動作開始時に痛みが出やすいのも特徴的です。